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易経・易占を学ぶにあたって

易経が語源となった言葉

易経が語源となった言葉

易経は、東洋思想や儒教の経典の中でも特に重要とされる「四書五経」のなかに選ばれており、礼節を重んじる社会生活にも役立ってきました。
ちなみに「四書」とは『論語』『孟子』『大学』『中庸』です。また「五経」とは『易経』『詩経』『書経』『礼記』『春秋』です。
今回は易経が元になった言葉が多くありますので、いくつか紹介しましょう。
易経をこれから学ぶ方にとって身近に感じられると思います。

「君子豹変す」

現代の意味としては、豹の毛が生え変わることで柄が替わり、柄が美しくなることから、地位の高い人や徳がある人は、変化に応じて自らを変えていく。もちろん、過ちがあったならばこれを認め改める。という意味です。急に裏切り行為をするといった意味で用いるのは間違った解釈です。本来の「君子豹変す」の言葉は、政治家や経営者、幹部にはしみじみ実感して欲しい言葉です。
易経は、君子の教えでもあるのはこういった言葉が書かれているからで、易経を用いたリーダーシップ論も多くあります。
さてこの「君子豹変す」は易経・澤火革(読み方は、たくかかく)の上爻の爻辞(こうじ)に「君子豹変す。小人は面を革む。征けば凶」
小人は表向きだけ改める。それでも良いのです。
小人に対して、高圧的に真から変革を求めるのはかえって凶になると解いています。
もともと一般の人は、変革はあまり好みません。保守的でいたいのが本音です。しかし君主やリーダーは変革が好きです。何か変えていこう、何か改善できる点はないかと日夜探しているのです。
国を治める君子への教えである易経にもかかわらず、「革命・改革」の革をあらわす、澤火革のような卦があるのも、易の奥深さをしみじみ感じます。

「虎視眈々」

虎視眈々の出典は、易経の山雷頤(さんらいい)という卦の四爻の爻辞です。
漢文は「顚に頤う。吉。虎視眈眈。其の欲遂遂。咎なし」から来ています。「虎視」とは虎が獲物を狙い見下ろしていること、「眈眈」は鋭い目つきで獲物を狙うさまを意味します。つまり、虎が鋭い目つきで獲物を狙っているさまにたとえ、相手にちょっとした隙がないかと有利な機会が来るのをうかがう様子を「虎視眈々」と言うようになりました。

また「虎の尾を履む」という言葉がありますが、これは天澤履(てんたくり)の卦辞(彖辞)に「虎の尾を履む。人を咥(くら)わず。亨る」と辞がかけられています。
虎の尾を踏むとは、噛み食われるかもしれない恐ろしい虎です。その尾を踏んでしまうようなものだという意味から、きわめて危険な情況、また、非常な危険をおかすことのたとえを表しています。
天澤履には四爻の爻辞にも同じような文があります。「虎の尾を履む。愬愬たれば終に吉」とあります。説明は省きますが、易経の本をお持ちでしたら少し開いて見てください。

これから易をはじめる人にとって、ありがたいことに易経の書籍は驚くほど多く出版されています。専門書店でなくてもインターネットで検索しますと、易の本はあまたあります。岩波文庫からはじまり本田済先生の朝日選書、安岡正篤氏の「易経講座・入門」、徳間書店、「まんが易経入門」まであります。どれも大変詳しく書かれていますが、あまりに詳しすぎる内容ですと易はやっぱり難しいとあきらめてしまう人も多いのが実情です。まずは入門書を手にとって見てこれなら初心者にも理解できそうだというわかりやすい本をお求めになることをおすすめします。

少し横道にそれました。話を戻します。続いてはこちらの言葉です。

「観光」

言葉というよりも単語ですが、この観光という単語はあまりに一般的で、意識せずに使っている人も多いはずです。実はこれも易経「風地観」四爻爻辞「国の光を観る。もって王の賓たるに利ろし」にある「国の光を観る」という箇所が由来となっています。
君主が直接、国の各地を巡察するのではなく、信頼された側近が君主から託されて見てくるのです。そして、側近が戻ってきたら君主は自分のかわりに各地をまわってきてくれた部下に対してねぎらいながら話を聞くという意味の爻辞です。
そもそも風地観という卦は、大地の上を吹く風の象ですから、風のように地上の色々なところを見るように、王たるものは四方八方に巡視をして、その報告をうけるだけでなく、時には王自らも実際に出張ると、それぞれの環境にあった指導ができるという教えがあるのです。

単語では他にも「事業」という言葉も易経の翼伝である繋辞伝や文言伝が由来とされています。易経・繋辞伝には「これを通と謂う。挙げてこれを天下の民に錯(お)くこれを事業と謂う」という箇所があり、前後の内容を簡単にまとめますと、
儲けることを主体にせずに、天下の人々のために役に立つことこそ、本当の事業だと説いています。


また、日本の元号である「明治」「大正」も易経が典拠とされました。
明治は、易経・説卦伝に「聖人南面して天下に聴き、に嚮(むか)いてむ」とあり、明るい方向へ治める君主の心構えを説いている場面から選ばれました。
そして大正は、地澤臨の彖伝からで、「いに亨りて以てしきは、天の道なり」とあり、喜んで進んでいくのが天の道だと説いています。
戦争や歴史が分かっている未来の私たちが、そういう時代になってほしいという思いで当時の人が元号を付けたのだと知ると感慨深いものがあります。
ちなみに「昭和」と「平成」は、易経とおなじ四書五経のひとつ「書経」からの出典とされています。

本稿で触れるのは畏れ多いことですが、平成天皇(上皇陛下)、「継宮明仁」の御名は易経の離為火・象伝が由来しています。今日の太陽は明るさを昨日の太陽から継ぎ、四方を照らしてくださっているという意味の部分からです。


同じくこの離為火が由来となったもので旭化成などの企業名で使われる「化成」があります。「重明もって正に麗(つ)き、すなわち天下を化成す」という彖伝からと言われています。
ついつい離為火へ説明をつづってしまいましたが、くわしくは易経の本をご覧ください。


そして「咸臨丸」です。

幕末、勝海舟が艦長として太平洋横断を果たした。我が日本で最初の蒸気軍艦です。
地澤臨初爻と二爻の爻辞で「咸じて臨む」と出てきます。地澤臨は勢いがあり発展して伸びてゆく形で、挑むという意味や解釈もできると思います。

ちなみに「感」という字は心でかんじるだけですが、「咸」は身も心もかんじるという意味です。詳細は澤山咸の卦をお読みください。

いかがでしたか。咸臨丸のように、易に興味を持ち、身も心もかんじているならば、希望を持って易の神秘な世界に挑んでいきませんか。
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