天高く、馬肥ゆる秋です。
本稿を書いている今、東京2020オリンピック大会からあっという間に年月が過ぎました。
パリオリンピックも感動の場面を思い出しますが、
オリンピックには、メダルを取らなくても、スポーツマン精神や人間性が垣間見える多くの逸話があります。
そのなかで今回は、「愛馬物語」を紹介します。
時は昭和7年、ロサンゼルス五輪、世界の人々の心を捉えた馬術競技選手がいました。
城戸俊三選手です。馬術決勝は、30キロ以上の山野を駆けるとても過酷な障害レース。
残り2キロを切ったところで、愛馬「久軍号」の息があがり、絶え絶えになってしまったのです。
それもそのはず、馬年齢が19歳と高齢だった「久軍号」。
全身からは、汗が吹き出し、鼻孔は開き切っていたそうです。
観衆は、その時、信じられない光景におもわず息をのみました。
栄光を目の前にしながら、最後の障害で、走り続けようとする愛馬から突然、城戸選手が降りたのです。
忠実な愛馬のこと、ムチをバシバシと打てば、最後の力を振り絞って、あと一歩障害に挑んだであったろうに…と思われます。
しかし、城戸選手は愛馬のたてがみをなでて、よくぞここまで頑張ったと言わんばかりに、労をねぎらいました。
その姿に、ほとんどの審査員は、思わずもらい泣きしたそうです。
そして、この行為は、ロサンゼルス市民からも称賛され、記念碑まで建てられたということです。
この逸話を聞いて、私も涙ぐんでしまいました。
さて、〔牝馬〕と〔従う〕という卦徳をもっている卦に☷☷坤為地があります。
昭和の易聖と呼ばれた、あの加藤大岳先生が中学3年の時に、学帽のことで校長先生と衝突したことがあるとの話を宇澤周峰先生の金曜講座で伺いました。
あの加藤大岳先生が?と耳を疑われるでしょうが、このいきさつの詳細は、またの機会にしたいと思います。
もちろん、加藤大岳先生ご本人は年弱志壮の血気が招いたことだったとその思い出を振り返りながら、
〔従う〕という坤為地(こんいち)の卦徳の実践は、簡単なようで、なかなかできないもの。
度量がなければ、人を包容することはできません。
これは、必ずしも女性に限ったことばかりでなく、男性も同じであり、
男性も乾の道、坤の道をあわせ履むような変化があるべき、と言い切っています。
明治のお生まれで、戦前戦中当時の風潮を考えると、加藤大岳先生は、なんと頭が柔らかい方だなぁ
という印象を受けました。
外出自粛で家に居て、家事については、何も分からないのに、
結構ブツクサ言っている自分に反省です。
易学を大別するならば、占術の面と思想的哲学の面があり、
両方の魅力に、とりつかれたのは会員の皆様と私も同じです。
乾為天、坤為地は特に、易経の広大さ、底知れない深さが感じられる卦です。
そして、加藤大岳先生は、家庭不和や紛争もその原因は、〔他愛もないもの〕だと
続けて説明されています。しみじみと、首肯してしまいます。
仲良くするか、背き合うか、そうでなければ、どちらかが〔従う〕というのが、
人間の在り方だと観て易経を作られた古代賢人の考え方は、現代にも通じることではないでしょうか。
日本易学振興協会では、宇澤周峰先生が東京などで易経とともに、本格的な筮竹を使った周易・易占教室を開催しています。主に、三変筮法、六変筮法を中心にした易占法です。先入観を捨てて、素直に易経の解説を聞いてください。詳細はこちらからどうぞ。