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易経・易占を学ぶにあたって

新井白蛾と新井白石

日本易・中興の祖といわれる新井白蛾と新井白石

地下鉄・落合駅からほど近い、早稲田通り沿いにある高徳寺には、新井白石の墓があります。

若い頃にお寺に寄食していたご縁だそうですが、新井白石は江戸中期の朱子学者で徳川将軍・家宣と7代家継の補佐を任じられ、武力ではなく、儒教思想を取り入れた「正徳」の政治を行ったことでも有名です。

ここで、易占を学んでいる私としては、日本易学界・中興の祖といわれている新井白蛾(あらいはくが)と名前が似ているので、何か関係があるのかと調べたのですが、結局わからずじまい・・・。

今月のコラム記事はどうしようかと焦るなか、図書館で新井白蛾をモデルにした小説を見つけたので、読んでみました。

京を舞台にした個性的な歴史時代小説を書いている三好昌子さんの『朱花の恋~易学者・新井白蛾奇譚』という新井白蛾が主人公の恋物語もある伝奇小説で、秘易という究極の易占をあつかいます。小説には、易占の道具である算木八卦六十四卦も出てきて、作家の方が下調べをした感じが伝わってきました。

そのなかで、こんな一文がございました。「八卦は森羅万象を表す、人もまた一部。ゆえに人の運命は、八卦を読み解くことで知ることができる。だが八卦だけがこの世のすべてではない」と、なるほど卦読みにばかりとらわれている私には耳が痛いところです。では、秘訣は?「それは、時じゃ。八卦に時が加わってこそ、この世は成り立つ。時が八卦を支配してこそ、未来がきまる」。あくまで小説のなかでの秘訣ですが、そういう一面もあると肯かせられました。

さて、実際の新井白蛾は、易占の大家でありながら、晩年は、現在の金沢・加賀藩に仕えることになり、藩校『明倫堂』で初代学頭として教えました。前田藩主が文教に力を入れるために、明倫堂が重要な任務を負っていたことが分かります。藩校では、儒者の新井白蛾先生ではありますが、自らを『古易館』と号し易者の名称を好んだといわれています。私たち大岳易では、易占法として白蛾流は用いませんが、『古易断時言』の序文には、「易経は、宇宙最第一の大経なり」と記されて、目をみはりました。
ゆるぎない信念で、易精神の行をし、究めたことがうかがえます。

時は流れ、荒廃していた新井白蛾のお墓を昭和36年に加藤大岳先生が団体や地元文化機関などと協力して綺麗にし、追善法要も行ったそうです。その記念顕彰講演会で、加藤大岳先生は、「易を学ぶものは、白蛾の恩恵を受けていない人は一人もいない」と述べられていました。古来の賢者たちが、易占に全身を打ち込んでいたことも、東洋の叡智が易の中にあるからだと、ひとしお感じます。(磯部周弦)

日本易学振興協会では、宇澤周峰先生が東京などで易経とともに、本格的な筮竹を使った周易・易占教室を開催しています。主に、三変筮法、六変筮法を中心にした易占法です。詳細はこちらからどうぞ

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